みんなは、自分が息を吸(す)うたびに取り込んでいる酸素(さんそ)がどこから来ているか、知っているかな?「森や木が酸素を作っている」って答えた人が多いかもしれないね。もちろんそれも正解なんだけど、実はもっとすごい事実があるんだ。なんと、私たちが吸っている酸素の半分以上は、海の中の目に見えないほど小さな生き物「プランクトン」が作っているんだよ!(NOAA – How much oxygen comes from the ocean?)
「えっ、そんな小さな生き物が?」って驚(おどろ)いたかな。プランクトンは、海の水1滴(てき)の中に何百万個もいることがある、とてもとても小さな存在(そんざい)なんだ。でも、その小さな体で、地球の酸素を作り、海の生き物たちの食べ物になり、さらには地球温暖化(ちきゅうおんだんか)を防ぐ働きまでしているんだよ。まさに「小さな巨人(きょじん)」だね!
この記事では、プランクトンの不思議な世界を一緒に冒険(ぼうけん)しよう。沖縄(おきなわ)の美しい海の秘密(ひみつ)も、実はプランクトンと深い関係があるんだ。さあ、海の中の小さな世界をのぞいてみよう!
この記事で学べること
- プランクトンってどんな生き物?——名前の由来から大きさまで
- 植物プランクトンと動物プランクトン——2つのタイプの違い
- 地球の酸素の半分はプランクトンが作っている!驚きの事実
- 海の食物連鎖(しょくもつれんさ)を支えるプランクトンの大切な役割
- 生物ポンプ——プランクトンが地球温暖化を防いでいるしくみ
- 光る海・赤い海の正体——プランクトンの驚きの特徴
- サンゴとプランクトンの不思議な共生(きょうせい)関係
- 沖縄の海が透明な理由と星砂(ほしずな)の秘密
- プランクトンが減っている!?——気候変動の深刻な影響
- 夏休みの自由研究にチャレンジ!プランクトンを観察しよう
プランクトンって何?——海に漂(ただよ)う小さな生き物たち

「プランクトン」って聞いたことはあるけど、いったいどんな生き物なんだろう?テレビや教科書で名前は知っているけど、実際にはよくわからない……という人も多いかもしれないね。まずはプランクトンの基本(きほん)を一緒に学んでいこう。
「漂う」が名前の由来
「プランクトン」という言葉は、古代ギリシャ語の「プランクトス(planktos)」という言葉がもとになっているんだ。その意味は「漂(ただよ)う」「流される」ということ。つまりプランクトンとは、水の中を漂って生活している生き物の総称(そうしょう)なんだよ(国立科学博物館 – プランクトンの世界)。
ここでポイントなのは、プランクトンは「特定の種類の生き物」の名前ではなく、「生き方」を表す言葉だということ。自分の力では水の流れに逆(さか)らって泳ぐことができない(または泳ぐ力がとても弱い)生き物を、まとめて「プランクトン」と呼んでいるんだ。だから、ものすごく小さな細菌(さいきん)から、大きなクラゲまで、「水に漂って生きている」という共通点があれば、みんなプランクトンなんだよ。
ちなみに、自分の力で泳ぎ回ることができる魚やクジラなどは「ネクトン」、海底にくっついて暮らすサンゴやヒトデなどは「ベントス」と呼ばれているよ。海の生き物は、こうやって「どんなふうに暮らしているか」で分けることもできるんだね。
ちょっと考えてみよう!
クラゲは自分で泳いでいるように見えるけど、プランクトンに分類されるって知ってた?クラゲは傘(かさ)を開いたり閉じたりして動くことはできるけど、海流(かいりゅう)の力にはかなわないんだ。だから、基本的に海流に流されて漂って生きている。「泳げるけど、海流に逆らえない」——これがプランクトンの基準(きじゅん)なんだよ。
プランクトンの大きさはピンからキリまで
プランクトンと聞くと、顕微鏡(けんびきょう)でしか見えないようなとても小さな生き物をイメージするかもしれないね。確かに多くのプランクトンはとても小さいんだけど、実はプランクトンの大きさは本当にピンからキリまで。目に見えないウイルスサイズのものから、長さ数メートルのクラゲまで、ものすごい幅(はば)があるんだ。
科学者たちはプランクトンを大きさによって細かく分類しているよ。次の表を見てみよう。
| 分類名 | 大きさ | 代表的な生き物 | わかりやすいたとえ |
|---|---|---|---|
| メガプランクトン | 20mm以上 | クラゲ、サルパ | 手のひらよりも大きいものも! |
| マクロプランクトン | 2〜20mm | オキアミ、ヤムシ | お米一粒(ひとつぶ)〜1円玉くらい |
| メソプランクトン | 0.2〜2mm | カイアシ類、ミジンコ | 砂粒(すなつぶ)くらい |
| マイクロプランクトン | 20〜200μm(マイクロメートル) | 珪藻(ケイソウ)、渦鞭毛藻(うずべんもうそう) | 髪の毛の太さくらい |
| ナノプランクトン | 2〜20μm | 円石藻(えんせきそう)、小型藻類(そうるい) | 赤血球(せっけっきゅう)くらい |
| ピコプランクトン | 0.2〜2μm | シアノバクテリア | 細菌と同じくらい |
| フェムトプランクトン | 0.2μm未満 | 海洋ウイルス | 光学顕微鏡では見えない! |
※μm(マイクロメートル)= 1mmの1,000分の1。出典:国立科学博物館 – プランクトンの世界
一番大きい「メガプランクトン」と一番小さい「フェムトプランクトン」では、大きさの差(さ)はなんと1億倍以上にもなるんだ!これは、アリとエベレスト山くらいの差だよ。同じ「プランクトン」なのに、こんなに大きさが違うなんて、すごいよね。
「1滴の海水に何百万個」ってホント?
ホントだよ!特にピコプランクトンやフェムトプランクトンのような超小型のプランクトンは、海水1ミリリットル(約1滴)の中に数十万〜数百万個も存在していることがあるんだ。私たちが海で泳いでいるとき、周りの水の中にはものすごい数のプランクトンがいるんだね。でも心配しないで、プランクトンはとても小さくて、人間に害(がい)を与えることはほとんどないよ。
植物プランクトンと動物プランクトン——2つのタイプの違い

プランクトンは大きく分けると「植物プランクトン」と「動物プランクトン」の2つのタイプに分けられるよ。陸上の世界でいうと、植物と動物のような違いがあるんだ。それぞれどんな特徴(とくちょう)があるのか、見ていこう。
太陽の光で栄養を作る「植物プランクトン」
植物プランクトンは、英語で「フィトプランクトン(phytoplankton)」と呼ばれるよ。「フィト」はギリシャ語で「植物」という意味なんだ。
植物プランクトンの最大の特徴は、陸上の植物と同じように光合成(こうごうせい)ができること。太陽の光のエネルギーを使って、水と二酸化炭素(にさんかたんそ)から栄養を作り出し、同時に酸素を出すんだ。だから、植物プランクトンは太陽の光が届く海の浅い部分(水深約200メートルまで)に住んでいるよ(日本海事広報協会 – 酸素は海からもつくられる)。
代表的な植物プランクトンには、こんなものがあるよ。
- 珪藻(ケイソウ):ガラスの成分(ケイ素)でできた美しい殻(から)を持つ。海で最も重要な植物プランクトン。推定(すいてい)12,000〜30,000種もいる!
- 渦鞭毛藻(うずべんもうそう):2本のしっぽ(鞭毛)を持ち、くるくる回転しながら泳ぐ。赤潮(あかしお)の原因になるものもある
- 円石藻(えんせきそう):炭酸カルシウム(石灰岩の成分)の小さな鱗(うろこ)で体をおおっている。とても美しい形をしている
- シアノバクテリア(藍藻):細菌(さいきん)の仲間だけど光合成ができる。地球で最初に酸素を作り始めた生き物の子孫(しそん)とも言われている
食べて生きる「動物プランクトン」
動物プランクトンは、英語で「ズープランクトン(zooplankton)」と呼ばれるよ。「ズー」はギリシャ語で「動物」という意味で、動物園(ズー)と同じ語源(ごげん)なんだ。
動物プランクトンは光合成ができないから、他の生き物を食べて栄養を得(え)ているよ。主に植物プランクトンや、もっと小さな動物プランクトンを食べて暮らしているんだ。動物プランクトンは自分で少し泳ぐことはできるけど、海流には逆らえないんだよ(日本海事広報協会 – 海の生態系)。
代表的な動物プランクトンには、こんなものがあるよ。
- カイアシ類(コペポーダ):動物プランクトンの中で最も数が多い。体長わずか1〜2mmだけど、海の食物連鎖を支える超重要な存在
- ミジンコ:淡水(たんすい)に多く住んでいる甲殻類(こうかくるい)。体長約2mmで、透明な体が特徴
- オキアミ:体長1〜6cm。エビのような姿(すがた)をしている。クジラの大好物!
- クラゲの幼生(ようせい):大人になると大きくなるけど、子どもの時はプランクトンとして海を漂う
- 有孔虫(ゆうこうちゅう):炭酸カルシウムの殻を持つアメーバのような生き物。沖縄の「星砂(ほしずな)」の正体!
どちらも得意な「ハイブリッド型」もいる!
実は、植物プランクトンと動物プランクトンのどちらの特徴も持っている「ハイブリッド型」のプランクトンもいるんだ!
その代表がミドリムシ(ユーグレナ)だよ。ミドリムシは光合成で栄養を作ることもできるし、鞭毛(べんもう)を使って自分で泳ぐこともできるし、他の小さな生き物を食べることもできる。植物なの?動物なの?と聞かれると、「どっちも!」と答えるしかない、とても不思議な生き物なんだ。
また、渦鞭毛藻の中にも、昼間は光合成をして、夜は他の生き物を食べるという、ちゃっかりした生き方をしているものがいるよ。こういう栄養の取り方を「混合栄養(こんごうえいよう)」と呼ぶんだ。
| 特徴 | 植物プランクトン | 動物プランクトン | ハイブリッド型 |
|---|---|---|---|
| 栄養の取り方 | 光合成で自分で作る | 他の生き物を食べる | 両方できる! |
| 運動能力 | ほとんど動けない | 少し泳げる | 泳げるものが多い |
| 住んでいる場所 | 光が届く浅い海(水深200mまで) | 海面から深海まで幅広い | 光が届く場所が多い |
| 体の構造 | 比較的シンプル | 口や足などがあり複雑 | 中間的 |
| 代表例 | 珪藻、円石藻、シアノバクテリア | カイアシ類、ミジンコ、オキアミ | ミドリムシ、一部の渦鞭毛藻 |
「植物」「動物」だけど、本当の植物・動物とは違う!
「植物プランクトン」「動物プランクトン」と呼ばれるけど、実は陸上の植物や動物とは全く違う分類の生き物がほとんどなんだ。科学の世界では「原生生物(げんせいせいぶつ)」というグループに入る生き物が多いよ。「植物のように光合成する」「動物のように食べる」という特徴から、便利に分けて呼んでいるんだね。
地球の酸素の半分はプランクトンが作っている!

みんなは「酸素を作っているのは森の木」だと思っていたかもしれないね。もちろん森の木も大切なんだけど、実は地球の酸素の少なくとも50%は海の植物プランクトンが作っているんだ!一部の研究者は、その割合が50〜85%にもなると推定しているよ(NOAA – How much oxygen comes from the ocean?)。これは本当にびっくりする事実だよね。
海は「もう一つの肺(はい)」
私たち人間は肺で呼吸をして酸素を取り込んでいるよね。地球を一つの生き物にたとえると、森林(しんりん)が「一つ目の肺」だとしたら、海は「もう一つの肺」なんだ。そして、海の中で酸素を作り出しているのが、無数の植物プランクトンたちだよ(日本海事広報協会 – 酸素は海からもつくられる)。
アマゾンの熱帯雨林(ねったいうりん)は「地球の肺」とよく言われるけど、実はアマゾンの森が作る酸素の大部分は、森の中の生き物の呼吸で使われてしまうんだ。一方、海の植物プランクトンが作った酸素は大気中に放出されて、私たちが吸うことができる。つまり、私たちが今この瞬間(しゅんかん)に吸っている酸素の2回に1回は、海の植物プランクトンが作ったものということになるんだよ!
NASAの観測(かんそく)によると、南極海(なんきょくかい)は「酸素工場」とも呼ばれていて、世界で最も活発(かっぱつ)に植物プランクトンが光合成を行っている海域の一つなんだ(NASA Earth Observatory – Oxygen Factories in the Southern Ocean)。
ちょっと考えてみよう!
今、深呼吸(しんこきゅう)してみよう。スーッと息を吸って……ゆっくり吐(は)いて……。その酸素の半分は、はるか遠くの海で、目に見えないほど小さなプランクトンが作ってくれたものなんだ。すごいと思わない?私たちの命は、知らないうちに海のプランクトンに支えられているんだね。
珪藻(ケイソウ)——海の一次生産のスーパースター
植物プランクトンにもいろいろな種類があるんだけど、その中でもダントツに活躍(かつやく)しているのが珪藻(ケイソウ)だよ。珪藻はガラスの成分(ケイ素)でできた透明で美しい殻を持っていて、顕微鏡で見ると宝石(ほうせき)のようにキラキラしているんだ。
珪藻がすごいのは、海洋の一次生産(いちじせいさん)の約40%を一手に担(にな)っているということ!一次生産というのは、光合成によって無機物(二酸化炭素や水)から有機物(栄養になるもの)を作り出すことだよ。珪藻だけで毎年100億〜200億トンもの炭素(たんそ)を固定しているんだ(Frontiers – Carbon Dioxide Concentration in Marine Diatoms、PMC – The evolution of diatoms)。
100億〜200億トンってどれくらいだろう?富士山(ふじさん)の重さが約3,500億トンと言われているから、珪藻が1年間に固定する炭素は富士山の約3〜6%の重さに相当する。たった1種類のグループの生き物がこれだけの仕事をしているなんて、すごいよね!
珪藻は「生きた宝石」
珪藻の殻を顕微鏡で見ると、幾何学的(きかがくてき)な美しい模様(もよう)が広がっているんだ。丸い形、棒状(ぼうじょう)の形、星のような形……その精密(せいみつ)さは、人間の技術でも真似(まね)できないほど。19世紀のヨーロッパでは、珪藻の殻を使って美しい模様を作る「珪藻アート」が流行したこともあるんだよ。
海の食物連鎖(しょくもつれんさ)の土台——プランクトンがいなくなったら?

「食物連鎖」って授業で聞いたことがあるかな?「食べる・食べられる」のつながりのことだよ。陸上では「草→バッタ→カエル→ヘビ→ワシ」みたいなつながりがあるよね。海の世界でも、同じように食物連鎖があるんだ。そして、その一番下の土台(どだい)にいるのが、プランクトンなんだよ(日本海事広報協会 – 海の生態系)。
プランクトンから始まる海の「食べる・食べられる」
海の食物連鎖は、こんなふうにつながっているよ。
太陽の光 → 植物プランクトン(光合成で栄養を作る:一次生産者)→ 動物プランクトン(植物プランクトンを食べる:一次消費者)→ 小さな魚(イワシ、アジなど:二次消費者)→ 中くらいの魚(サバ、カツオなど:三次消費者)→ 大きな魚・海の哺乳類(マグロ、クジラなど:高次消費者)
この食物連鎖には、とても大切なルールがあるんだ。それは、ピラミッドの各段階で、体重のおよそ10倍のエサを食べる必要があるということ。つまり、1kgのマグロを育てるには約10kgの中くらいの魚が必要で、10kgの中くらいの魚を育てるには約100kgの小さな魚が必要で、100kgの小さな魚を育てるには約1,000kgの動物プランクトンが必要で、1,000kgの動物プランクトンを育てるには約10,000kgの植物プランクトンが必要になるんだ。
つまり、1kgのマグロの裏には、10,000kg(10トン!)の植物プランクトンが必要ということ。すごい量だよね。だからこそ、海にはプランクトンがものすごくたくさんいないと、食物連鎖が成り立たないんだ。
具体的な食物連鎖の例を見てみよう。
- 南極海:植物プランクトン → オキアミ → ヒゲクジラ(シロナガスクジラなど)
- 日本近海:珪藻 → カイアシ類 → イワシ → マグロ
- 外洋:シアノバクテリア → 微小動物プランクトン → カタクチイワシ → カツオ
ちょっと考えてみよう!
もしプランクトンが地球からいなくなったら、どうなるだろう?まず小さな魚が食べ物をなくして死んでしまう。すると中くらいの魚も食べ物がなくなる。次に大きな魚もいなくなる。最終的には海の生き物のほとんどが消えてしまうかもしれない。しかも、長い時間をかけて地球の酸素も減っていく。プランクトンがいなくなることは、地球にとって大災害(だいさいがい)なんだよ。
カイアシ類——「海の牛」と呼ばれる動物プランクトン
海の食物連鎖で特に重要な動物プランクトンがカイアシ類(コペポーダ)だよ。カイアシ類は体長わずか1〜2mmという小さな甲殻類なんだけど、そのすごさはハンパじゃないんだ。
まず、カイアシ類は網で採集される動物プランクトンの75%以上を占めているんだ(笹川平和財団 – 海の小さな巨人─カイアシ類)。つまり、海にいる動物プランクトンの大部分がカイアシ類ということになるよ。
カイアシ類は「海の牛(うし)」とも呼ばれているんだ(NOAA Fisheries – Copepods: Cows of the Sea)。なぜかというと、陸上で牛が草を食べて牛乳やお肉を作り出すように、カイアシ類は植物プランクトンを食べて、それをイワシやアジなどの小さな魚のエサに変えているから。つまり、植物の栄養を動物の栄養に変換する「橋渡し役」をしているんだね。
もう一つすごいのが、カイアシ類の毎日の「垂直移動(すいちょくいどう)」だよ。カイアシ類は夜になると水面近くに上がってきて植物プランクトンを食べ、朝になると水深数百メートルまで潜(もぐ)っていく。この距離は、体の大きさからすると、人間が毎日富士山を往復するようなものなんだ。この移動のおかげで、表層の栄養が深海に運ばれるんだよ。
カイアシ類は地球上で最も数が多い動物かも!?
カイアシ類の個体数は、地球全体で推定数千兆匹とも言われているよ。これは昆虫(こんちゅう)の数にも匹敵(ひってき)するかもしれない、ものすごい数なんだ。体長わずか1〜2mmの小さな生き物が、こんなにたくさんいるなんて驚きだよね。
生物ポンプ——プランクトンが地球温暖化を防(ふせ)いでいる!?

プランクトンのすごさは、酸素を作ることや食物連鎖を支えることだけじゃないんだ。実はプランクトンには、地球温暖化を防ぐ驚きの力があるよ。その秘密が「生物ポンプ(バイオロジカルポンプ)」と呼ばれるしくみなんだ。
マリンスノー——海の中の雪
生物ポンプがどうやって働くのか、順番に見ていこう。
ステップ1:まず、海の表面近くで植物プランクトンが光合成をして、大気中の二酸化炭素(CO2)を体の中に取り込む。これを「炭素固定(たんそこてい)」というよ。
ステップ2:次に、動物プランクトンが植物プランクトンを食べる。植物プランクトンに含まれていた炭素は、動物プランクトンの体の中に移る。
ステップ3:動物プランクトンのフン(うんち)や、死んだプランクトンの殻や体が、海の底に向かってゆっくり沈(しず)んでいく。この沈んでいくものを「マリンスノー」と呼ぶんだ。
マリンスノーは、深海潜水艇(しんかいせんすいてい)から見ると、本当に雪が降っているように見えるんだよ。白い小さな粒がキラキラと舞い落ちていく光景は、とても幻想的(げんそうてき)なんだ。
ステップ4:マリンスノーが深海の底に到達すると、そこに含まれる炭素は数百年〜数千年もの長い間、深海にとどまる。つまり、大気中にあった二酸化炭素を、プランクトンの力で深海に「閉じ込めて」しまうんだ!
このしくみが「生物ポンプ」なんだよ。まるでポンプで水を汲(く)み上げるように、表層の炭素を深海に送り込んでいるイメージだね。
マリンスノーの正体
マリンスノーは、プランクトンの死がいやフン、殻のかけら、バクテリアのかたまり、砂粒(すなつぶ)などがくっつき合ってできた「粒(つぶ)」なんだ。大きさは0.5mm〜数cmとさまざま。1日に数十メートル〜数百メートル沈むものもあるよ。マリンスノーは深海の生き物にとっては貴重(きちょう)な食べ物でもあるんだ。深海には光が届かないから、植物が育たない。だからマリンスノーが「天からの恵(めぐ)み」になっているんだよ。
生物ポンプの驚きの経済的価値
生物ポンプがどれくらいすごいか、数字で見てみよう。
まず、生物ポンプは毎年約28億トンの炭素を海洋の深層に輸送しているんだ。これをCO2に換算(かんさん)すると約100億トン。人間活動による化石燃料(かせきねんりょう)からのCO2排出量は年間約368億トン(2023年)だから、生物ポンプは人間が出すCO2の約27%に相当する量の炭素を深海に閉じ込めている計算になるよ(Nature Climate Change – Global distribution and valuation of biological carbon pump)。
さらに驚くのは、この生物ポンプの経済的な価値だよ。2025年にNature Climate Change誌に発表された研究によると、生物ポンプの炭素隔離(たんそかくり)サービスの経済的価値は、なんと年間約5,450億ドル(約80兆円)と推定されているんだ!(Nature Climate Change – Global distribution and valuation of biological carbon pump, 2025年)
80兆円って、日本の国家予算(こっかよさん)の約7割くらいの金額だよ。目に見えない小さなプランクトンが、これだけの価値のある仕事をしているなんて、信じられないよね。
プランクトンが小さくなると生物ポンプが弱まる!?
ここで心配なことがあるんだ。地球温暖化が進むと、プランクトンの体が小さくなる傾向(けいこう)があるんだよ。プランクトンの体が小さくなると、マリンスノーも小さくて軽くなるから、深海に沈む前に途中で分解されてしまう。つまり、温暖化が進む→プランクトンが小さくなる→生物ポンプが弱まる→CO2が深海に運ばれにくくなる→さらに温暖化が進むという悪循環(あくじゅんかん)が起きる可能性があるんだ。
プランクトンの驚きの特徴——光る海、赤い海の正体

プランクトンには、ただ海を漂っているだけじゃない、びっくりするような特徴があるんだ。夜の海が青く光ったり、海が赤く染(そ)まったり……その正体は全部プランクトンなんだよ!
夜光虫——海が青く光る不思議
夜の海が青白く美しく光っている写真を見たことがあるかな?まるで星空が海の中に溶(と)け込んだような、幻想的な光景だよね。この不思議な現象の正体は、夜光虫(ヤコウチュウ)というプランクトンなんだ。
夜光虫は直径約1〜2mmの大型の渦鞭毛藻(うずべんもうそう)で、プランクトンとしてはかなり大きい部類に入るよ。肉眼でもギリギリ見えるくらいの大きさなんだ。夜光虫の最大の特徴は、物理的な刺激(しげき)に反応して青白い光を発すること。波が打ち寄せたり、手で水をかいたりすると、パッと光るんだ。
これは「生物発光(せいぶつはっこう)」と呼ばれる現象で、夜光虫の体内にある「ルシフェリン」という物質が、「ルシフェラーゼ」という酵素(こうそ)の働きで光を出すしくみなんだ。ホタルが光るのと同じ原理(げんり)だよ。
夜光虫が大量に発生すると、昼間は赤く見えるんだけど(後で説明する「赤潮」の原因になることも)、夜になると海一面が青く光る、この世のものとは思えない幻想的な光景が広がるんだ。日本各地の沿岸(えんがん)で春〜夏にかけて観察できるよ。
なぜ夜光虫は光るの?
実は、夜光虫がなぜ光るのか、はっきりした理由はまだ完全にはわかっていないんだ。有力な説の一つは「防御(ぼうぎょ)のため」というもの。夜光虫を食べようとした動物プランクトンがさわると夜光虫が光る→その光に気づいた魚が動物プランクトンを食べる→結果的に夜光虫が助かる、というしくみだと考えられているよ。光で「助けて!」と合図(あいず)を送っているようなものだね。
赤潮——プランクトンが増えすぎると……
海が赤やオレンジ、茶色っぽく変色する「赤潮(あかしお)」。ニュースで聞いたことがある人もいるかもしれないね。赤潮の正体は、プランクトンが異常に大量発生して、海水の色が変わってしまう現象なんだ。科学的には「有害藻類ブルーム(HABs:Harmful Algal Blooms)」と呼ばれているよ(農林水産省 – 赤潮はなぜ発生するか)。
赤潮が起きる原因は、主に2つ。水温が上がることと、海に栄養が多すぎること(富栄養化)だよ。生活排水(せいかつはいすい)や工場の排水に含まれる窒素(ちっそ)やリンなどの栄養分が海に流れ込むと、それをエサにプランクトンが爆発的(ばくはつてき)に増えてしまうんだ。
赤潮が起きると、大量のプランクトンが海の中の酸素を使い果たしてしまい、魚が窒息死(ちっそくし)してしまうことがある。また、プランクトンの中には毒(どく)を出す種類もあって、養殖場(ようしょくじょう)の魚やカキに大きな被害を与えることがあるんだ。日本では瀬戸内海(せとないかい)や東京湾(とうきょうわん)、有明海(ありあけかい)などの閉鎖的(へいさてき)な海域で発生しやすいよ。
春のブルーム——海に花が咲(さ)く季節
プランクトンの大量発生には、悪い面だけでなく、地球にとって大切な役割を果たしているものもあるんだよ。それが「春のブルーム」だ。
春になると日照時間(にっしょうじかん)が長くなり、海水の温度が上がり始める。すると、冬の間に深海から混ぜ上げられた栄養たっぷりの海水と、たっぷりの太陽の光が組み合わさって、植物プランクトンが一気に大量発生するんだ。これが「春のブルーム」で、まるで海に花が一斉(いっせい)に咲いたような状態になるよ(京都大学 – 植物プランクトンの増殖)。
北太平洋や北大西洋では特にこの春のブルームが顕著(けんちょ)で、NASAの人工衛星(じんこうえいせい)からもクロロフィル(葉緑素)の濃度(のうど)が高くなるのが観測できるんだ。衛星画像では、海が緑色に変わっていく様子がはっきりわかるよ。
春のブルームが起きると、植物プランクトンをエサにする動物プランクトンも一緒に増える。するとそれを食べる小さな魚も増えて……という具合に、海全体が活気(かっき)づくんだ。春のブルームは、海の食物連鎖にとってとても大切なイベントなんだよ。
赤潮とブルームの違い
「赤潮」も「ブルーム」も、どちらもプランクトンの大量発生のことなんだけど、ちょっと違いがあるよ。赤潮は主に人間活動による富栄養化が原因で起き、魚に害を与えることが多い。一方、春のブルームは自然のサイクルとして起きるもので、海の生態系にとって必要な現象なんだ。同じ「大量発生」でも、原因と影響がまったく違うんだね。
サンゴとプランクトンの不思議な共生(きょうせい)関係

沖縄のきれいなサンゴ礁(さんごしょう)を見たことがあるかな?色とりどりのサンゴが広がる海は、本当に美しいよね。でも実は、サンゴのあの美しい色は、サンゴの中に住んでいるプランクトンのおかげだって知ってた?ここでは、サンゴとプランクトンの不思議な「助け合い」の関係を見ていこう。
褐虫藻(かっちゅうそう)——サンゴの中に住む植物プランクトン
サンゴの体の中には、褐虫藻(かっちゅうそう)という植物プランクトンが住んでいるんだ。褐虫藻は渦鞭毛藻(うずべんもうそう)の仲間で、一つ一つは目に見えないほど小さい単細胞(たんさいぼう)の藻類(そうるい)だよ(基礎生物学研究所 – 褐虫藻)。
サンゴと褐虫藻の関係は、「共生(きょうせい)」と呼ばれる、お互いに助け合う素晴らしい関係なんだ。
褐虫藻がサンゴにしてあげること:サンゴの体の中で光合成をして、作った栄養(糖やアミノ酸)の最大90%をサンゴにプレゼントする。サンゴはこの栄養で生きている。
サンゴが褐虫藻にしてあげること:安全な住み家(すみか)を提供し、光合成に必要な二酸化炭素や栄養塩(えいようえん)を与える。
つまり、サンゴは褐虫藻の「家」になり、褐虫藻はサンゴの「食料工場」になっているんだ。この助け合いのおかげで、栄養が少ない沖縄の海でもサンゴは元気に育つことができるんだよ。
ちなみに、サンゴの美しい色は、実はこの褐虫藻の色なんだ。褐虫藻は茶色、黄色、緑色などいろいろな色を持っていて、それがサンゴに色を与えている。サンゴ自体の骨格(こっかく)は白い石灰岩(せっかいがん)なんだよ。
ちょっと考えてみよう!
サンゴは緑色の光を発して、共生する褐虫藻を誘(さそ)い込んでいることが2019年の研究でわかったんだ。まるでサンゴが「こっちにおいで!」と光の合図を出しているみたいだね。サンゴと褐虫藻は、長い長い進化(しんか)の歴史の中で、こんなすごい「チームワーク」を身につけたんだよ。
サンゴの白化とプランクトンの関係
最近、ニュースで「サンゴの白化(はっか)」という言葉を聞くことが増えたよね。サンゴの白化とは、サンゴの体から褐虫藻が抜け出してしまう現象のことなんだ(おきなわ物語 – 沖縄のサンゴ礁)。
海水温が通常よりも1〜2℃高い状態が数週間続くと、サンゴはストレスを感じて褐虫藻を体の外に出してしまう。すると、褐虫藻の色がなくなるから、サンゴの白い骨格がそのまま見えて「白化」するんだ。
白化したサンゴは、栄養を作ってくれる褐虫藻がいなくなったから、いわば「食料工場を失った」状態。短期間なら褐虫藻が戻ってくることもあるけど、白化が長く続くとサンゴは餓死(がし)してしまう。沖縄では380種以上のサンゴが生息しているけど、地球温暖化によるサンゴの白化は年々深刻になっているんだ(WWFジャパン – サンゴ礁生態系)。
サンゴ礁は「海の熱帯雨林(ねったいうりん)」とも呼ばれていて、海の面積のたった0.1%しかないのに、海の生き物の25%以上がサンゴ礁を住み家にしているんだよ。サンゴの白化は、褐虫藻というプランクトンとの共生が壊(こわ)れることで起きる。プランクトンの問題は、海全体の問題につながっているんだね。
植物プランクトンのグループ別・海洋一次生産への貢献割合(出典:PMC – The evolution of diatoms、北海道大学)
サンゴも実はプランクトンを食べている!
サンゴは褐虫藻から栄養をもらっているだけじゃないんだ。実はサンゴのポリプ(一つ一つの小さな体)には小さな触手(しょくしゅ)があって、夜になると触手を広げて水中の動物プランクトンを捕まえて食べるんだよ。サンゴは「植物プランクトンを体の中に飼いながら、動物プランクトンを食べる」という、なんともたくましい生き方をしているんだね!
沖縄の海とプランクトン——透明な海の秘密

沖縄の海は、どうしてあんなに透明で美しいんだろう?実は、その秘密もプランクトンと深い関係があるんだよ。ここでは、沖縄の海とプランクトンの不思議な関係を探(さぐ)っていこう。
なぜ沖縄の海は透明なの?
沖縄の海の透明度(とうめいど)は40メートル以上にもなることがあるんだ。つまり、水面から40メートル先のものまで見えるということ。プールの水の透明度は15〜20メートルくらいだから、沖縄の海はプールよりもずっと透明なんだよ。
その理由は、ちょっと意外なんだけど……沖縄の海にはプランクトンが少ないからなんだ。
「え?プランクトンが少ないの?」と驚くかもしれないね。沖縄の海は「海の砂漠(さばく)」とも呼ばれるほど、栄養が少ない(貧栄養:ひんえいよう)海域なんだ。プランクトンが育つために必要な窒素やリンなどの栄養がとても少ないから、プランクトンの数も少ない。プランクトンが少ないと水が濁(にご)らないから、あの美しい透明な海になるんだよ。
一方、北海道(ほっかいどう)の親潮(おやしお)が流れる海域は栄養が豊富で、プランクトンがたくさんいる。だから北海道の海は緑っぽく見えることがあるんだ。プランクトンが多い海はイワシやサンマなどの魚がたくさん獲(と)れるけど、透明度は低い。プランクトンが少ない海は魚は少ないけど、透明度が高い。面白い関係だよね。
沖縄の海が美しいのは、黒潮(くろしお)という暖かい海流のおかげでもあるんだ。黒潮は世界最大級の暖流で、栄養が少ない水を運んでくる。だから沖縄近海は貧栄養になるんだよ(JAMSTEC – 海流と生態系の関係、鹿児島大学 – 黒潮における生物生産力)。
でも、沖縄の海は栄養ゼロじゃない!
沖縄の海が「海の砂漠」と呼ばれるからといって、生き物がいないわけじゃないよ。黒潮の強い流れが作る渦(うず)が深海から栄養を巻き上げたり、東シナ海では長江(ちょうこう)や黄河(こうが)から流れ込む栄養が混ざり合ったりして、プランクトンを支えているんだ。その栄養のバランスが絶妙(ぜつみょう)だから、世界有数のサンゴ礁が育っているんだよ。
星砂の正体は有孔虫——プランクトンの化石!
沖縄のお土産(おみやげ)として人気の「星砂(ほしずな)」。小さな星の形をした砂で、とってもかわいいよね。でも、この星砂の正体は、実は「砂」じゃないんだ。
星砂は有孔虫(ゆうこうちゅう)というプランクトンの殻(から)なんだよ!有孔虫は炭酸カルシウムの殻を持つアメーバのような単細胞生物で、動物プランクトンの一種。星砂は「ホシズナ」という有孔虫の殻が砂浜に集まったものなんだ。
つまり、みんなが「きれい!」と言って手に取っている星砂は、何千万年も前から海を漂ってきたプランクトンの「お家」なんだよ。すごいよね!沖縄本島の北部や竹富島(たけとみじま)の「星砂の浜(はま)」で見ることができるよ。
ちなみに、有孔虫の殻は化石(かせき)としても重要で、地質学者(ちしつがくしゃ)は有孔虫の化石を調べることで、何百万年も前の海の温度や環境を推定しているんだ。プランクトンは、地球の歴史を記録する「タイムカプセル」でもあるんだね。
沖縄で見られる発光プランクトン
沖縄では、夜光虫による幻想的な発光プランクトンを見ることができるよ。特に人気なのが、恩納村(おんなそん)や石垣島(いしがきじま)で開催される「ナイトシュノーケリングツアー」だよ。
夜の海に入って手を動かすと、触(ふ)れた海水がキラキラと青白く光るんだ。まるで自分の手が魔法(まほう)の力を持ったみたい!フィンで水をかくと、足元から光の粒(つぶ)がきらめいて、本当に夢のような体験ができるよ。
夜光虫は春〜夏(4月〜8月ごろ)に多く発生するから、沖縄に行く機会があったらぜひ体験してみてね。ただし、夜の海は危険な面もあるから、必ずガイドさんと一緒に行こうね。
プランクトンが減っている!?——気候変動(きこうへんどう)の影響

ここまで読んで、プランクトンがどれだけ大切な存在か、よくわかったよね。酸素を作り、食物連鎖を支え、地球温暖化を防ぎ、美しい海を作り出している。でも今、そのプランクトンに大変なことが起きているんだ。
80年間で24%も減少した海のプランクトン
2024年11月、東北大学(とうほくだいがく)の研究チームが科学雑誌Natureに発表した衝撃的(しょうげきてき)な研究結果がある。それは、過去80年間で海洋プランクトンの個体数が約24%も減少したというものだ(東北大学 – 地球温暖化が海洋プランクトンに及ぼす深刻な影響、Nature – Migrating is not enough for modern planktonic foraminifera)。
24%って、4匹に1匹がいなくなった計算だよ。それがたった80年の間に起きたんだ。
この研究では、世界中の海で採集されたプランクトン性有孔虫(ゆうこうちゅう)のデータベースを詳(くわ)しく分析したんだ。その結果、プランクトンが温かい海水を避(さ)けて、年間約10キロメートルのペースで高緯度(こういど)方向(つまり北や南の極地の方)に移動していることがわかったよ。さらに、水平方向だけでなく、より深い水深にも移動していることが新たに発見されたんだ(ScienceDaily – Climate change threatens plankton)。
つまり、プランクトンは「暑い!」と感じて、涼(すず)しい場所を求めて逃(に)げているんだ。でも研究者たちは、移動するだけでは多くの種が生き残れないと警告しているよ。特に熱帯域(ねったいいき)のプランクトンが最も大きな被害を受けていて、2050年や2100年には生存限界(せいぞんげんかい)を超える海域が広がると予測されているんだ(北海道大学 – 海洋生態系を支えるプランクトン)。
さらに、2010年にカナダのダルハウジー大学が発表した研究では、1950年以降、植物プランクトンの総量が約40%減少したというデータもあるんだ(Nature – Global phytoplankton decline、Scientific American – Phytoplankton Population Drops 40 Percent)。ただし、この研究に対しては他の科学者から「測定方法に問題がある」という指摘もあって、著者自身も2014年に減少率を下方修正しているよ。科学では、新しいデータによって結果が変わることもあるんだ。それでも、プランクトンが減少傾向にあることは多くの研究者が認めているよ。
プランクトンが減ると何が起きる?
プランクトンが減ると、こんな連鎖的(れんさてき)な問題が起きるよ。
1. 酸素の生産量が減る → 地球全体の酸素が不足する危険
2. 食物連鎖が崩壊する → 魚が減って漁業に大打撃
3. 生物ポンプが弱まる → CO2が深海に運ばれにくくなり、温暖化が加速
4. さらに温暖化が進む → さらにプランクトンが減る → 悪循環
これは本当に深刻な問題なんだ。
海洋酸性化(かいようさんせいか)がプランクトンの殻を溶かす
地球温暖化に加えて、もう一つプランクトンを脅(おびや)かしている問題がある。それが「海洋酸性化」だよ。
人間が大量に出すCO2の約30%は海に溶(と)け込んでいるんだ。CO2が海水に溶けると炭酸(たんさん)になって、海水が酸性(さんせい)に近づいていく。産業革命(さんぎょうかくめい)以降、海のpH(ペーハー:酸性・アルカリ性の度合い)は約8.2から約8.1に下がっているよ(気象庁 – 海洋酸性化の影響、国立環境研究所 – 海洋酸性化の影響)。
「0.1しか変わっていないじゃん」と思うかもしれないけど、これは海にとってはとても大きな変化なんだ。0.1の変化で、海水中の水素イオン濃度は約30%も増加しているんだよ。
海洋酸性化で最も影響を受けるのが、炭酸カルシウムの殻を持つプランクトンだ。酸性の海では殻が溶けやすくなってしまうんだ。
- 翼足類(よくそくるい):「海の蝶(ちょう)」とも呼ばれる美しい貝の仲間。アラゴナイトという炭酸カルシウムでできた殻を持っている。2004年〜2019年の15年間で、なんと生息数が5分の1にまで激減(げきげん)した!
- 円石藻(えんせきそう):炭酸カルシウムの鱗(うろこ)を持つ植物プランクトン。海水のカルサイト過飽和度(かほうわど)がわずかに下がるだけで、急激に生育が低下する
- 有孔虫(ゆうこうちゅう):炭酸カルシウムの殻を作ることが困難になっている。星砂の有孔虫にも影響が出ているかもしれない
想像してみよう。プランクトンの殻は、人間でいうと骨(ほね)のようなもの。骨が溶けていく病気にかかったら、生きていくのがとても大変だよね。海洋酸性化は、プランクトンにそんな苦しみを与えているんだ。
プランクトン・マニフェスト——世界が動き始めた
でも、希望もあるんだ。世界中の科学者たちが、プランクトンを守るために動き始めているよ。
2025年6月、フランスのニースで開かれた国連海洋会議(こくれんかいようかいぎ)で、「プランクトン・マニフェスト」が提示されたんだ(東京大学 – プランクトンに未来を託す国際提言、東京大学大気海洋研究所 – プランクトン・マニフェスト)。
プランクトン・マニフェストは、東京大学大気海洋研究所(たいきかいようけんきゅうじょ)も参加した国際的な提言書(ていげんしょ)で、プランクトンの機能を活用して、気候変動・生物多様性の喪失(そうしつ)・汚染(おせん)という3つの地球環境の危機に取り組む戦略を提案しているんだ。日本語版も作成されているよ。
このマニフェストの中心にあるメッセージは、「プランクトンを守ることは、地球を守ること」ということ。プランクトンは目に見えないほど小さいけれど、地球の未来はプランクトンにかかっていると言っても過言(かごん)ではないんだ(Columbia Climate School – Plankton Are Central to Life on Earth)。
自由研究にチャレンジ!プランクトンを観察しよう
さて、ここまでプランクトンのすごさを学んできたけど、「実際にプランクトンを見てみたい!」と思った人もいるんじゃないかな?夏休みの自由研究にもぴったりのアイデアを3つ紹介するよ。
自由研究アイデア1:プランクトンを採集して観察しよう
難易度:★★☆(ちょっとがんばれば誰でもできる!)
必要な期間:1〜2日
用意するもの:
- 洗濯機用の糸くず取りネット(100円ショップで買える!)
- 小さなプラスチック瓶(ふた付き)
- 針金またはハンガー(丸く曲げてネットの口を作る)
- 紐(ひも)(引っ張る用)
- 結束バンドまたは輪ゴム
- スポイト
- スライドガラスとカバーガラス
- 顕微鏡(学校で借りられるかも!)
プランクトンネットの作り方:
- 糸くず取りネットの底を切り開く
- プラスチック瓶を結束バンドでネットの底にしっかり固定
- ネットの口を針金の輪に固定(直径15〜20cmくらい)
- 針金の輪に紐を3か所で結ぶ(安定するよ)
- 完成!
採集のやり方:
- 海や池のそばで、ネットをゆっくり水の中で引く(急に引くとプランクトンが逃げちゃう)
- 数分間引いたら、ネットを上げて瓶の中の水を確認
- 瓶の水をスポイトで1滴スライドガラスに載せる
- カバーガラスをそっとかぶせる(空気が入らないように)
- 顕微鏡で観察!まずは低い倍率(40〜100倍)で全体を見て、面白い生き物がいたら高い倍率に上げよう
出典:LAB to CLASS – プランクトンを採集しよう
⚠️ 安全のための注意!水辺での活動は必ず大人と一緒に行ってね。一人では絶対に行かないこと。また、深い場所や流れの速い場所には近づかないようにしよう。
自由研究アイデア2:食物連鎖図をつくろう
難易度:★☆☆(誰でもできる!)
必要な期間:半日〜1日
この記事で学んだ海の食物連鎖を、大きな模造紙(もぞうし)やポスターにまとめてみよう!
作り方:
- 大きな紙(模造紙やB3サイズの紙)を用意する
- ピラミッド型の枠(わく)を描く
- 一番下に植物プランクトン(一次生産者)を描く:珪藻、渦鞭毛藻などのイラストを添えよう
- 2段目に動物プランクトン(一次消費者)を描く:カイアシ類、ミジンコのイラスト
- 3段目に小さな魚(二次消費者)を描く:イワシ、アジなど
- 4段目に中くらいの魚(三次消費者)を描く:サバ、カツオなど
- 頂点に大きな魚や海の哺乳類(高次消費者)を描く:マグロ、クジラ、サメなど
- 「食べる→食べられる」の方向に矢印を描く
- 忘れずにバクテリア(分解者)も加えよう:有機物を分解して栄養塩に戻す矢印を描く
- 各段階に、この記事で紹介した統計データ(例:カイアシ類は動物プランクトンの75〜80%以上)を書き添えると、もっと良くなるよ!
自由研究アイデア3:プランクトンの培養実験
難易度:★★★(少し根気が必要!)
必要な期間:1〜2週間
プランクトンを自分で育ててみよう!特別な道具がなくても、身近な材料でプランクトンを培養(ばいよう)できるよ。
用意するもの:
- 透明なプラスチック容器(ペットボトルを半分に切ったものでもOK)を数個
- 池や田んぼの水
- 枯れ草(少量)
- 日光が当たる場所(窓辺がベスト)
- ルーペまたは虫眼鏡
実験のやり方:
- 容器に池や田んぼの水を入れる
- 枯れ草を少し浮かべる(プランクトンのエサになるよ)
- 日光がよく当たる場所に置く
- 毎日観察して、水の色や、肉眼で見える生き物の変化を記録する
- 数日〜1週間後には、水が緑色に変わってきたり、小さな生き物が動き回っているのが見えたりするはず!
- 条件を変えた実験もしてみよう:「日光あり vs 日光なし(暗い場所)」「枯れ草あり vs 枯れ草なし」など。条件によってプランクトンの増え方がどう違うか比べると、立派(りっぱ)な実験レポートになるよ!
観察のポイント:
- 水が緑色になったら、それは植物プランクトンが増えた証拠(しょうこ)!
- ルーペで水面を見ると、小さな点がピクピク動いているのが見えるかも。それが動物プランクトンだよ
- 毎日の写真を撮って変化を記録すると、レポートがわかりやすくなるよ
自由研究をもっとレベルアップ!
この3つのアイデアを組み合わせると、とても充実(じゅうじつ)した自由研究になるよ。例えば、アイデア1でプランクトンを採集→アイデア3で培養して増やす→アイデア2で食物連鎖図にまとめる、という流れだ。さらに、この記事で学んだ「酸素生産」「生物ポンプ」「気候変動の影響」などの情報も書き加えれば、先生もびっくりするような自由研究になること間違いなし!
まとめ:小さな生き物が支える大きな海の世界
さあ、プランクトンの世界を冒険してきた旅も、そろそろ終わりに近づいてきたよ。この記事で学んだことを、もう一度ふり返ってみよう。
プランクトンは「漂う」生き物。ウイルスサイズの超小型のものから、クラゲのような大型のものまで、水の流れに逆らえない生き物はみんなプランクトンと呼ばれているんだったね。
植物プランクトンは地球の酸素の半分以上を作っている。特に珪藻は海洋一次生産の約40%を担う「スーパースター」。私たちが今吸っている酸素の2回に1回は、海のプランクトンのおかげなんだ。
海の食物連鎖の土台はプランクトン。カイアシ類は「海の牛」として、植物の栄養を動物の栄養に変える大切な橋渡し役。1kgのマグロの裏には10トンもの植物プランクトンが必要なんだよ。
生物ポンプで地球温暖化を防いでいる。プランクトンのフンや死がいがマリンスノーとなって深海に沈み、年間約28億トンもの炭素を深海に閉じ込めている。その経済的価値は年間約80兆円!
夜光虫、赤潮、春のブルーム。光る海の正体も、赤い海の正体も、春に海が生き生きする理由も、全部プランクトンの仕業(しわざ)だったんだ。
サンゴの美しさはプランクトンのおかげ。褐虫藻という植物プランクトンがサンゴの中に住んで、栄養を作り、色を与えている。温暖化で白化が起きるのは、この共生関係が壊れるからなんだ。
沖縄の透明な海の秘密もプランクトン。プランクトンが「少ない」から透明な海になり、星砂はプランクトンの殻。光る海もプランクトンの力。
でも、プランクトンは減っている。過去80年で24%、1950年以降で40%も減少。海洋酸性化は殻を持つプランクトンを脅かしている。世界の科学者たちは「プランクトン・マニフェスト」でこの問題に立ち向かおうとしている。
参考文献
この記事を書くにあたって参考にした資料を紹介するよ。もっと詳しく知りたい人は、ぜひチェックしてみてね。
日本語の資料
- NOAA – How much oxygen comes from the ocean?(アメリカ海洋大気庁)
- 日本海事広報協会 – 酸素は海からもつくられる
- 日本海事広報協会 – 海の生態系
- 笹川平和財団 – 海の小さな巨人─カイアシ類
- 東北大学 – 地球温暖化が海洋プランクトンに及ぼす深刻な影響(2024年)
- 東京大学 – プランクトンに未来を託す国際提言
- 東京大学大気海洋研究所 – プランクトン・マニフェスト
- 国立科学博物館 – プランクトンの世界
- 気象庁 – 海洋酸性化の影響
- 農林水産省 – 赤潮はなぜ発生するか
- 国立環境研究所 – 海洋酸性化の影響
- 北海道大学 – 海洋生態系を支えるプランクトン
- 基礎生物学研究所 – 褐虫藻
- 京都大学 – 植物プランクトンの増殖
- おきなわ物語 – 沖縄のサンゴ礁
- WWFジャパン – サンゴ礁生態系
- LAB to CLASS – プランクトンを採集しよう
- サイエンスポータル – 植物プランクトンの種類がCO2吸収に影響
- JAMSTEC – 海流と生態系の関係
- 鹿児島大学 – 黒潮における生物生産力
英語の資料
- NOAA Fisheries – Copepods: Cows of the Sea
- NASA Earth Observatory – Oxygen Factories in the Southern Ocean
- Nature – Migrating is not enough for modern planktonic foraminifera(2024年)
- Nature – Global phytoplankton decline over the past century
- Nature Climate Change – Global distribution and valuation of biological carbon pump(2025年)
- PMC – The evolution of diatoms
- Frontiers – Carbon Dioxide Concentration in Marine Diatoms
- Scientific American – Phytoplankton Population Drops 40 Percent
- ScienceDaily – Climate change threatens plankton
- WHOI – The $500 billion question: value of studying the ocean’s biological carbon pump
- Columbia Climate School – Plankton Are Central to Life on Earth



